通信制の恋
東雲くんの言葉に直は渋々と言った感じで、横を向いていた体を正面へと戻し、コンビニで買ってきたであろうおにぎりやサンドイッチを取り出した。


「直、それがお昼?」


「うん、そうだけど?」


「栄養バランスとか大丈夫?今度私がお弁当作ってこようか?」


「…げほっ、げほっ」


「だ、大丈夫!?直!」


急にむせた直に私は立ち上がりその大きな背中をゆっくりとさすった。


「無自覚とはこういうことね。」


「ああ。今のは直に効いただろ。」


そんなことを杏樹ちゃんと東雲くんが話しているとはつゆ知らず、私は直に声をかけた。


「直、大丈夫?気管に入った?」


「結がとんでもない発言をするからだよ。」


「とんでもない発言?」


「はぁ…、無自覚かよ…」


「???」


溜息を吐いて何かボソッと言った直だったが、その言葉を聞き取ることはできなかった。


「いい、結。お弁当作ってくるとか簡単に男の前で言ったらダメだ。」


「えっ、あ、ごめんなさい…、そんなに嫌だとは思わなくて…」


「誰も嫌だって言ってないでしょ。お弁当を作るって簡単に言っちゃダメってこと。男が聞いたら勘違いしちゃうから。」


「そ、そうなんだね…。き、気を付けます。」


「ん、よし。」


満足気に頷いた直は再びご飯に手をつけ始めた。


「天野くんも大変ね…」

「それな…」


と杏樹ちゃんと東雲くんが話していることも知らない私だった。
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