きみのための星になりたい。

それから待つこと数十分。

「はい、凪お姉ちゃん。お待たせしました」
「……わあ、美味しそう」

食卓に並んだのは、オムライスだ。チキンライスの上に覆い被さるように乗せられている卵は優しい黄色で、半熟に焼かれたそれはお皿を持ち上げるだけでプルプルと揺れる。

蓮が『混ぜ混ぜしてたよ』と言っていたが、このメニューを見て、きっと割ったばかりの卵を混ぜていたのだろうなと想像がついた。

「蓮、上手にできたね。これ、蓮が一生懸命混ぜたから、こんなに綺麗な色をしてるんだね。お姉ちゃん、早く食べたいなあ」

私の言葉を聞いた蓮は、少しだけ照れくさそうにはにかむ。隣にいたお母さんも蓮の表情を見て優しく笑い、膝を落として蓮のことを抱きしめた。

「よかったね。お姉ちゃんに喜んでもらえて。さすがお母さんの子ね」
「えへへ、お母さんにぎゅーってされた。でもね、お母さん?ちょっと苦しいよ?」
「あら、ごめんね。蓮がこんなにもお手伝いが上手にできるようになって、お母さん嬉しいのよ」

苦しいと言いながらも、蓮はとっても嬉しそうだ。

その様子を見て、どことなく重苦しかった私の心がふっと軽くなる気がする。

それから食事の準備に取り掛かり、終わり次第三人で手を合わせ、蓮とお母さんが作ってくれたオムライスが並ぶ食卓を囲む。

卵とチキンライスを掬って一口分を口内に放り込み、しっかりと味わうように何度も咀嚼を繰り返す。それは頰が落ちそうなほど美味しくて、お店で提供される料理よりも美味しく感じるのだから不思議だ。

やっぱり誰かが一生懸命作ってくれた手料理はいいなあと思った。

「ありがとう、蓮。とっても美味しいよ」

蓮に感謝と感想を伝えると、またその表情は明るさを増す。こうして素直に喜びを表現されると、こちらもさらに頰を緩めてしまう。

「蓮、あなたやっぱりすごいわ。今まで食べたオムライスの中で一番美味しい」

私に続くように、お母さんも目尻を垂らした。

こういうひと時が今の私にとっては癒しであり、心安らぐ時間。

お母さんにあかりのことを相談しようと思ったこともあるけれど、今は蓮のことで手一杯みたいだし、何よりこれは私が解決しなければどうにもならない問題だから。あかりと喧嘩をしたという事実は伏せておくことにした。

「蓮、ほら、口にケチャップがついてるわよ」
「ええ?お母さん、とってー?」
「ふふっ、仕方ないわね」

目の前で笑いあうお母さんと蓮を瞳に映しながらも、私は心の中であかりの笑顔を思い出していた。
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