きみのための星になりたい。

……その時、思ったんだ。

ああ、私の言った言葉は、〝正解〟だったんだって。

私が笑顔を見せて受け入れていれば、こうしてお母さんは喜んでくれるし、安心してくれる。だとすれば、友達と接するときも同じようにしていればいいんじゃないのか。そう思うようになった。

それからも何度も蓮の容態は変わり、その度にお母さんは申し訳なさそうに眉を下げ、私に色々なことを頼む。

〝凪、今日は蓮の検査があるから、お母さん、側に付いててあげたいの。お父さんも仕事休めないし……。だから、凪には申し訳ないんだけど……参観日、今回は誰も行けなくてもいいかしら〟
〝凪、今から蓮の入院が決定して。お父さん今日出張で帰ってこれないみたいだから、悪いけど蓮の着替えをまとめて持ってきてくれない?〟

それら全てを、私は受け入れた。本当は寂しかったし、お母さんにもっともっと私を見て欲しいと思うこともあったけれど。お母さんのために、家族に迷惑をかけないように、嫌な顔ひとつ見せずににこりと笑って〝大丈夫〟と言い続けてきたのだ。

……そのことを今、ふと思い出して私は気付く。

ああ、私は寂しかったのかもしれない、と。いつも蓮を優先し、私のことは後回しにする家族。私が何かを頑張っても、〝あなたはお姉ちゃんだからね〟と簡単に片付けられることも多かった。自分でも知らず知らずのうちに、私の胸の内には寂しさが膨れ上がっていたみたいだ。

確かに、私が本音を隠し、自分を偽るようになったきっかけは友達かもしれない。でも、それを打ち切ることだってできたはずだ。あのとき、お母さんにきちんと相談できていれば、もしかしたら私は今も自分の意見をきちんと伝えられる人であれたのではないか。

自分の言いたいことは言わず、グッと閉じ込めて、何事もなかったかのように笑顔を作る。頼み事をされたらそれを受け入れるし、常に周りに合わせて同調する、なんて、こんなことはなかったのではないか。

そう考えれば、引き金は確かに友達だが、それに拍車をかけたのは家族かもしれない。……いや、きっとそう。だって私は、あの日、思ったのだから。

全部嫌な感情も取っ払って誰かの望むように動くことができれば、もう今以上に傷付くことはないのだ、と。
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