MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「佐々原さん。……あの」
春奈のクラスを受け持っている女性保育士が,何だか言いにくそうに口を開いた。
「はい。何ですか?」
「四月から新年度で,春奈ちゃんも一つ上のクラスに上がります。上のクラスになったら,イベントごとにお絵かきしたりするんですけど。……例えば,父の日とか」
「父の日……」
美優は,この保育士の言わんとする意味を察した。父親のいない春奈が,父の日の前に「パパの似顔絵」が()けず,周りの子にからかわれて傷付くんじゃないか……。
「いち保育士の(わたし)が,個人のご家庭の事情に首を突っ込むのは(はばか)られるんですが……。園としても,できるだけの配慮はしますけど」
「……つまり,春奈には父親が必要ってことですよね?大丈夫,分かってますから」
春奈が(いじ)められたり,孤立(こりつ)してしまうんじゃないかという保育士の心配を,美優も理解している。
「あたしの方でも,ちゃんと今後の対策は考えてます。あたしの両親もフォローしてくれてますから,先生方が春奈一人のことを気負(きお)うことないですよ」
「そうですか?すみません!」
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