過ぎた時間は違っても
兄の高校の部員は監督がレギュラーとして出すから一緒にしているだけという感じだった。一番ゴールに適した場所や体勢にいてもボールを渡さない。兄がリングにボールを入れるためには自分で取ってパスなどもせず自分で動くしかなかった。まるでこっちの高校対兄の高校対兄。一人で必死に頑張る兄を見ていられなかった。

「翔琉・・・!」

「あーっ!!見に来てたんだ!!一本!一本勝負しよ!お願い!!」

試合が終わって兄の許へ行こうとした時、下から大きな声がした。何だろうと思って声のする方を見ると、彼が飛び跳ねながら私に両手を振っていた。予想外の事に固まっている私を観覧している人たちも部活の人たちも見ていた。兄に助けを求めようと捜したけれど、別に良いのではと言いたげな表情をしていた。
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