過ぎた時間は違っても
「怪我、してない?」

「俺は・・・、全然・・・。・・・あんな大口叩いておきながら守れなくてごめん。・・・痛かったよな」

彼女は守ると言った俺を責めるどころか、怪我していないかと心配してくれていた。どうして俺を心配する余裕があるんだ。どうして迷惑しかかけていない俺を責めないんだと思ったけれど、彼女は笑っていた。
腹を刺されて痛くないはずが無いのに、心配する俺の何が面白かったのかは分からない。でも、我慢できないというように吹き出して、まだ塞がらない傷を痛がりながら笑っていた。
彼女の笑顔がこういう形で見れると思っていなかった俺はどう反応したら良いのか分からなかった。だって何が笑いの引き金を引いてしまったのか分からないのに変に口を出す訳にもいかなくて。
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