過ぎた時間は違っても
父と絶縁したはずの男に拐われて二度と目を覚ます事が無くなった事も。羽季の再従兄弟として生きていた過去を全て思い出す事が出来た。私たちが持っていた違和感は真実とは違う生活をしていたからだったんだ。

「羽季っ!私っ」

「もうどこにも行かないで!もう・・・、俺・・・っ」

私が生きている。心臓が動いて息をしている。暖かい体がある。生きていれば当たり前の事がこんなにも喜ばしい事なんて思いもしなかった。羽季とまた笑い合えているのがこんなにも嬉しいなんて。
ただ、私たちには真実ではない今までの記憶がある。どういう経緯で羽季は柏崎家の長男のまま、母親が亡くならずに済んだのか。どういう経緯で私は伊野家ではなく来栖家に生まれなければならなかったのか。
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