過ぎた時間は違っても
表情は作れても心まで作れないのか、握られた手からまだ生きたいという恐怖が伝わってくる。俺も唯織と同じだよ。俺もまだ生きていてほしい。まだまだ唯織の色んな表情を見ていたい。唯織の色んな感情に触れたい。

「別れてくれ。迷惑なんだ」

「良いの!?私と別れれば虐められるのよ!?」

「やれよ。退学になりたいんならな」

外も暗くなり、部長たちと分かれてから俺は恋人を名乗る子にもう名乗るなと頼んだ。虐めを理由に脅してきたけれど、最初から気付くべきだったんだよな。うちの高校では一回でも見つかれば退学になるって。犯人は分かっているんだから教師に突き出せば良かったんだって。そうすれば恋人になる事もなかったんだって。
< 56 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop