過ぎた時間は違っても
そんな事をした所で唯織の寿命が伸びる訳じゃないって知っているのに。そんな事をしたら安心して成仏出来なくなってしまうのに。
ごめんな。俺、最後まで手をかけさせてばかりで。何度も直そうとしたんだけど、どうしても唯織の存在に甘えている俺がいるんだ。このままじゃダメだって分かっているのに。社会に出た時に困るのは俺自身なのに。

「いってきます。ほら、早く」

「いってきまーす。待ってよー」

唯織も走らせるわけにいかないし、本人もその事は分かっている。だから唯織は自転車で、俺は走って高校に向かっていた。それなりに急いで食べた朝食が胃の中で揺れていたけれど、ゆっくり進む自転車が唯織の病気が現実の物で深刻であると教えていた。
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