あなたに捧ぐ潮風のうた

 それから一週間後、弟の後白河法皇が幽閉されて鬱ぎ込む上西門院が心配でたまらなかった小宰相ら女房は、昼も夜もなく主人の側にいた。

「……もうよい」

 暗い顔で小宰相ら女房を拒む上西門院だったが、小宰相は決して諦めなかった。

 迷惑と思われようが、主人の側にいて世話をして時間があるときには、他の女房とともに都の様子などを話して聞かせた。

 その努力の甲斐あって、上西門院も法皇が幽閉された直後に比べたら、時には笑顔も浮かべるようになり、顔色が随分良くなってきていた。

 良かった、と小宰相はほっと肩の抜いた。

 やはり主人には常に笑顔でいてもらいたいと思っていた時のことだ。

 目が霞んで視界が狭くなり、ぐらりと身体が揺れる。何だろう、小宰相が不思議に思う暇もない。

 ───何処か遠くで女房たちの叫び声が聞こえた気がした。


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