あなたに捧ぐ潮風のうた


 ぽつり、と、厚い曇り空から涙のような雨が、屋根に小さな音を立てながら、何度も零れ落ちる。
 それはまるで、涙を流さない上西門院に代わり、天が地上の騒ぎに胸を痛め、静かに悲しみの涙を流しているようだ。

 玉のような雫が草木を濡らす。そして、その雫が集まり、地面に浅い穴を穿つ。

 京の都にもたらされた静寂の中で、思い出したように虫が無常を嘆くように鳴き始めた。
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