優しい彼と愛なき結婚
会社から遠ざかる車内の中、息苦しさを感じていた。
「綾人さん、やっぱり私は綾人さんの条件には従えません。借金は真っ当に働いて、綺麗なお金で返します」
近道はせずに時間はかかっても、胸を張って月島家に返したい。
「それが優里の答えか」
「はい」
「それじゃ、コレをあげる」
ハンドルから片手を外し、ジャケットのポケットから取り出したものを差し出された。
「なんですか…っ、」
手渡された写真。
そこに写っていた歩夢の姿に綾人さんを凝視する。
「そこはとあるバーで。歩夢くんはバイトをしているようだ。だが実際は売春目的の店だ」
「売春?歩夢がそんなお店で働くはずがありません」
「そこまでして、彼は金が欲しいのでは?時給は通常の2倍はするだろう」
歩夢の近くにいる女性は露出度が高く、普通のお店でないことくらい弟にも理解できるだろう。それを知っててーー
嫌な汗を掻いた。
「僕と結婚していれば、彼には不自由させなかったのに。よりによって金のない大悟を選ぶとは、人生の選択肢を間違えていると思うよ」
「……」
「さぁ、着いたよ」
いつの間にか、高級ホテルの前に車が止まっていた。