優しい彼と愛なき結婚

3日ズル休みをして重い身体を引きずり、出勤した。


「大丈夫?無理しないでよ」


奈緒さんが駆け寄ってきてくれたけれど、愛想笑いが出来るほどにまだ回復していなかった。


「まだ顔色悪いじゃない。休んだ方がいいわよ」


「いえ…迷惑かけて申し訳ありません」


正直、こんな状態で仕事はできるはずがないと思ったが、気を紛らわせていないと同じことばかり何度も考えてしまい、おかしくなりそうだった。


仕事に、逃げた。



「当面は事務処理に徹しろ。外に出るな。定時に帰れ」


初めて市野さんにきつい口調で命令され、感謝しつつ従った。

さすがにお客さんと会う気にはなれないし、青白くクマのある顔では訪問できない。

なにやってるんだろう…。


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