優しい彼と愛なき結婚

昔から私は他者の顔色を伺い、自身の意見は押し殺してきた。それが面倒事に巻き込まれない鉄則だったし、そうやって自分を守ってきた。

卑怯だ。
誰かのためでなく結局、自分が可愛いだけなのだ。

羽奈ちゃんだって、失恋する恐怖や関係が変わってしまうかもしれない恐怖を抱き、

それでも真っ向から大悟さんに立ち向かう行為は勇気がないと出来ない。私のようにうだうだと悩まず、あの年でもう覚悟を決めているのだ。



ーー私も、覚悟を決めないと。




逃げていたってひとつも変わらない。


再び青信号になる瞬間を待ちわびる。





横断歩道の向こう側、
自動販売機の横で腕を組みながら大悟さんが立ち止まってくれていることを確認する。


良かった、待ってくれている。


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