優しい彼と愛なき結婚
副社長さんは静かに説明してくれた。
「先日園長とも話したのだが、フリースクールはボランティアで成り立っているところが多い。どこも精一杯な状態で経営をしていて、うちも例外ではないらしい。職員の数やスペースの問題から、新しい生徒を多くは受け入れられなくなってきていると聞いたよ。大悟のように無償で働きたいという職員はなかなかいないしね」
「…それは俺も聞いた」
頬杖をついて大悟さんは頷く。
「困っている子供達はまだまだいるわけだし、入園を断ることは心苦しいことだ。ーーそこでおまえだよ」
「俺?」
「大悟が赤羽電機に入社して、多くの利益を生んでくれ。優秀な営業マンは1日で百万単位を売り上げてくれる。おまえも新入社員時代を思い出して、多くの結果を残して会社に貢献して欲しい」
「意味が分からない。俺に、レイの会社の歯車になれとでも?」
荒々しく大悟さんが返したが、副社長は落ち着いている。
「今後、赤羽電機はフリースクールに継続的に寄付をしていこうと思う。社員の子供で困っている者がいれば通えばいいしね。反対派が出ないよう、うちの社員全員の賃金アップは欠かせないけれど。うちが寄付をして、フリースクールの数を増やして、良い職員を採用すればいいとは思わない?」
「…こんな俺が勉強を教えるより、きちんとした奴が教えてやった方が効率も良いだろうな。だから俺はアルバイトを辞めて赤羽電機で働き、少しでも多くフリースクールの費用を稼げということか」
「フリースクールは俺のように休日に行けるしね」
副社長の話は筋が通っていた。
フリースクールの未来を真剣に考える2人を尊敬する。他の誰かのために、利益を求めずにここまでできることは凄いよ。