優しい彼と愛なき結婚

前髪を掻き上げて、大悟さんはこちらを見た。

「優里はどっちがいいと思う?」


「今のようにフリースクールに貢献することも、遠くからフリースクールを守ることも、どちらも大悟さんにしかできないことです。どちらを選んでも私は賛成ですよ」


「優里…」


大悟さんが答えを出すことだと思う。
そして私はそれを精一杯応援するだけだ。


「実は花林も今年いっぱいで店をたたむらしい。渡米していた息子夫婦が日本に帰ってくるというので、一緒に住むことになったようだ」


「寂しくなりますね」


それに美味しいお蕎麦が食べられなくなることは残念だ。


「返事はいつでも構わないよ。急ぐことでもないから、気が向いたら言ってくれ」


「悪いな。考える時間をくれ」


「ああ。それじゃ、この話は終わり。ところで大悟?おまえが現れるまで桜野さんからおまえののろけ話を聞いていたんだよ」


ラブラブだね、と副社長は茶化してきた。わざと話題を変えてくれたことは明白だ。


フリースクールを思う2人の気持ちは同じ。半信半疑だったけれど、副社長は間違いなく大悟さんの親友だ。


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