優しい彼と愛なき結婚
会社で見せる副社長の微笑みは気品が溢れていてうっとりするようなものだが、大悟さんの言葉に笑う彼は声を出して心から楽しそうに笑うのだ。
きっとその純粋な笑顔は親しい間柄の者にしか見せないのだろう。
「なにか大悟のことで聞きたいことはない?高校時代からの付き合いだからね。なんでも知ってるよ」
「おい」
大悟さんも副社長も5杯以上のビールを飲み、今度は焼酎を飲み始めた。私は梅酒を追加しただけだ。まだ来店して1時間程しか経っていないのにペースが早い。明日も仕事なのに大丈夫だろうか。
そういえば大悟さんとお酒を飲むことは初めてだ。彼は家ではコーラとスポーツドリンクばかり飲んでいる。
「…それじゃぁ大悟さんの女性関係とか」
ああ、久しぶりに飲んだせいだ。
私もお酒に侵されつつある。
「アンタ…」
心底嫌そうな大悟さんに対して、副社長は間髪入れずに答えてくれた。
「大悟に付き纏っている女性は沢山いたな。どの子も派手で、ヤンチャしてる子ばかり。世の中にうんざりしてて、ダメなのは他者だとすれてる女の子。学生時代も、社会に出てからもそういう女性ばかり、大悟の周りに集まる。だけどさ、あなたも知っている通り、うちの大悟は真面目なんだ。その内面を知りもせず髪の色や威嚇するような顔つきで判断してくる女性に、大悟が心惹かれることもなくーー間違いなく言えることは、大悟の初恋は桜野さん、あなただよ」
例えそれが私のためについた嘘だとしても、こんな風に私たちを見守ってくれる第三者がいることが心強い。