優しい彼と愛なき結婚
結婚。
寿退社する先輩方を見て、私もいつか…と彼氏がいない身分ながらも憧れていた。
幸せな家庭を築きたい。
父と母が私に幸せを与えてくれたように、私も。
月島家に嫁いだらお金に困ることもなく、上流階級の暮らしができるかもしれない。弟と祖母にとってもそれは良いことだ。
それでも。
借金を背負った身分だけれど、"愛"が欲しいと思ってしまう。
綾人さんと結婚しても大悟さんに甘えても、愛はない。
月島家には祖母の命を救ってもらったものと同然で、私たちは大切なものを失わずに済んだことも一生、忘れられない。
離れられない。
私は月島家から逃れられない。