優しい彼と愛なき結婚

3日後、綾人さんから連絡があった。

すぐに連絡をくれなかったことに苛立ちよりも悔しさを覚える。私は彼にとってその程度の女なのだ。


「この間はごめんね」


お詫びのつもりなのか格式の高いイタリアンで彩りの良い花束を渡された。

テーブルの上の料理も豪華で見た目がとても美しい。


「綾人さん、本当のことを教えてください。彼女は誰ですか」


「水無瀬(みなせ)のことは優里も知っているよね。昨日は大切な話があると言って久しぶりに会ったんだよ」


そうだった。彼女の名前は水無瀬さん。
高校の生徒会長で、当時から綾人さんとはお似合いのカップルだと生徒のみんなが認めていた。


「それで大切な話とは?」


「ああ、仕事のことだったよ。つまらないことさ。それで?優里はどうしたの」


優しく聞いてくれる。
そうだ、綾人さんはいつも優しかった。

ソファーに押し倒されたあの日だけは、強引で怖かったけれど。綾人さんはいつも私の味方で居てくれた、かけがえのない幼馴染だ。

傷つけたくはないし、関係を崩したくもない。


「私たち、幼馴染に戻れませんか?」


水無瀬さんのことは、もういいや。
私たち2人のことが解決すれば、綾人さんと水無瀬さんがどういう関係であろうと口出しする権利はないから。


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