優しい彼と愛なき結婚

私の言葉に心を乱すそぶりも見せず、前菜のサラダを器用に口に運ぶ彼を見て付け足す。


「私にとって綾人さんはカッコいい幼馴染で、夫婦という近い距離に居ていい人ではないのです。あなたは私には吊り合わない人です」


「幼馴染から夫婦になることは、そう珍しくないでしょう。吊り合うとかそうでないとか、誰が決めたの?僕は優里とならいい家庭を築けると思ったから結婚を申し入れたんだよ」


甘い言葉の裏にどのような感情を隠し持っているのだろう。


「ところで週末、式場を見に行かないか」


「…行きたくないです」


どうしよう。
どうしたら逃れられる?


「なぜ?水無瀬のことを疑っているの?」


首を振る。
疑っているわけではない。
大悟さんに教えてもらい真相を知っているからそこは気にならない。


「まさか好きな人が居るとかじゃないよね」


落ち着いた声が私を責めているように脳裏に響いた。


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