優しい彼と愛なき結婚

身構えて月島家の豪邸を訪ねたが、終始穏やかな空気が流れていた。綾人さんと来た時は正装でなければいられないような高貴な雰囲気が流れていたが、今日はお母様の手料理を美味しくいただけた。


「まさか2人が付き合っていたとは驚きだわ」

「いや俺も驚いた。他の男と結婚するから別れてと言われた時は心臓止まるかと思ったよ。問い詰めたら相手が兄貴で、そこは笑いそうになった」

「綾人を思って切り出せなかったのよね…ごめんなさいね」


お母様が申し訳なさそうな顔をしてくれた。どうやら大悟さんの考えた嘘を信じてくれたらしい。


「こちらこそ先延ばしにしてしまい、すみません」

「まだ綾人には話してないのだろう」


口数の少なかったお父様がワイングラスを傾けながら口を開いた。


「俺から兄貴に話しても逆上されるだけだし」

「分かった。…私から話そう」


難しい顔をしたお父様の前向きな発言にホッとする。これも大悟さんの読み通りだった。

"兄貴は父親の言うことには絶対服従だ"
大悟さんの言う通り、綾人さんが引き下がってくれることを願うばかりだ。

< 38 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop