優しい彼と愛なき結婚

会社の歯車になることより、例え偽善者と呼ばれようがここにいる方がずっと自分らしく生きられる気がしている。


「大悟、なんで昨日来なかったの?」


浅木が問題を解いている間を見計らってか、少女が俺の背中を叩いてきた。


「やめてやめて。昨日は奥さんと過ごしたから」


「なによそれ!大悟には羽奈がいるでしょう」


羽奈(はな)は高校1年生で、モデルの仕事をしながら学校に通っている。授業に出る時間が少ない分、疑問点はフリースクールで補うスタイルだ。


「俺たちは友達だろ?浅木、計算間違えしてるぞ」

「友達?今は無理でも大人になったら、羽奈が大悟と結婚する予定だったの!」


冷静に問題を解き直す浅木の横で、羽奈が喚き散らす。

高校生でも結婚とか考えるんだな。
俺はつい最近、優里と出逢うまでは想像すらしてなかった。


「聞いてるの、大悟?」


「羽奈、悪いけど他の男を見つけて?俺はもう奥さんのモノなの」


「なによそれ。羽奈は絶対に諦めないわ!」


以前から好きだとは言われていたが、さすがに高校生相手に本気で取り合うこともなく流していた。しかし今日は随分とご立腹だ。

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