優しい彼と愛なき結婚
浅木以外の子の勉強も見てやるつもりだったが、羽奈はしつこかった。
「その人のどこがいいの」
口を尖らせ、答えるまで退かないという意思表示なのか椅子まで運んできた。
「真っ直ぐで一生懸命なところとか色々あるよ」
「どこかのお嬢様?」
「お嬢様って?」
「名家出身だとか、金持ちだとか!」
「……いや普通だけど」
今にも泣き出しそうに俺を睨む。
さて、どうすればいいのやら…。
「顔は?私より美人?」
難しい質問が投下され、浅木の答案を見るフリをして答えを探す。小さな彼女の自尊心を傷付けない回答を導き出さねば。
「顔は可愛いよ。もちろん羽奈も可愛い」
なにも浮かばず、間を空けすぎることも変だと思い、言ってみたがーー顔を赤らめた羽奈を見て失言だったと気付いた。
中途半端な反応は彼女に気を持たせてしまうだけだ。
「まぁいいわ。私が大人になるまでよろしくやっててよ。すぐに奪いに行くから!」
「…羽奈。本当に俺は奥さんを愛しているから、ごめん」
どうか貴重な10代の時間を俺なんかのために1秒も割かないで欲しい。