優しい彼と愛なき結婚

歩夢から私と大悟さんの分の夕飯も作ってくれるという連絡が入っていたため、"ありがとう。遅くなります"と返信を打った。

本当は外回りを終えて家に直行する気であったが、なんとなく綾人さんのことがあり帰りにくくなった。

嘘が下手な性格だから大悟さんに見透かされてしまう怖さもある。

初めて通った道のカフェで珈琲を飲みながら、ノートパソコンで仕事をしてから帰宅した。




「ただいま帰りました」


22時。
お風呂上がりで髪の濡れた大悟さんが出迎えてくれた。


「お疲れ。腹減ったろ」

「遅くなってごめんなさい」

「気にすんなよ。味噌汁、温めるから待ってて」


明日からは早く帰って、歩夢と一緒に夕飯を作るから。今日だけは許してね、大悟さん。


「歩夢のチャーハン、絶品だな」

お皿をレンジに入れながらいつも通り笑う大悟さんを見て、綾人さんと顔のパーツはよく似ていると思う。

でもその優しい笑顔と、どこか裏のある彼の笑顔は全く別物だし、焦げ茶色の瞳に浮かぶ優しさと、人を見下したような冷めたそれとはまた違う。


同じ血が流れている以上は似た部分もあるが2人は正反対だ。


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