優しい彼と愛なき結婚
次の電車に乗り込み、同じ家を目指す。暗い夜道ではよく見えず、まだ駅までの道のりを覚え切れていないから、ひとりでなくて助かった。
「大悟さん、助けてもらってありがとうございました」
「ああ、たまたま居合わせて良かったよ」
「姉には秘密にしてもらえますか。余計な心配かけたくないので」
「分かった。金が必要なのか」
歩夢はこくりと頷いた。
「…遊ぶ金が欲しいわけでなくて、もうじき姉の誕生日なので盛大にお祝いしたいなと」
「……」
言葉を失う。
ここにある家族のかたちに衝撃を受けずにはいられない。
月島家では感じられなかった家族の絆が見えて、心が震えた。
「やっぱり短期的にアルバイトを増やして頑張ります」
婚姻届に書かれた誕生日は、11月3日。
後、1ヶ月半程度だ。
「それって俺も呼ばれるの?」
「もちろんです」
「俺もなんか考えとくわ」
「はい!ぜひ、お願いします」
金なら出そうか?そう声を掛けることが間違いだと分かるから、なにも言わなかった。
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