聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

いずみは心の中でごめんねと謝りつつ、鞄の中から乾姜を取り出した。
この世界では薬として使用されているジンジャーパウダーである。

(念のため持ってきてよかった)

今日は豚肉のソテーだったため、取り分けたのは豚肉だ。
それを薄切りして、できるだけ脂分を取るためにお湯でゆで、ポテトと合わせた。
ベーコン入りのハードパンは、できるだけ細かくちぎり、スープに入れ、煮詰めてパン粥にし、さらにジンジャーパウダーを加えて香り付けする。
飲み物はジンジャーパウダーをお湯で溶かし、ハチミツを加えて出来上がりだ。

エイダはいずみの指示に合わせて火をつけたり煮詰めたりするだけだったが、ぽかんとした顔をしている。

「それ、本当は薬よね? いいの、こんなに入れちゃって」

「ショウガは体にいいけど、薬みたいにここぞという時まで出し惜しみするものじゃないのよ。料理みたいに、普段使いしたほうが体にいいの。それとも、ショウガってそんなに高価なの?」

「薬の中じゃ安いほうですけど」

エイダはごにょごにょと言いよどむ。

「生産量が少ないからね、きっと。でも、売れると分かれば量産するはずだわ」

とすれば、やはりショウガ料理を普及させるのがいずみの火急の仕事な気がする。

「できた。ありがとうエイダ。私、アーレス様に持っていくわね」

いずみがお盆をもって立ち去ると、エイダの周りに一気に人が集まる。
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