聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
その夕食から二ヵ月。いずみは毎日、神官とともに魔法の訓練に明け暮れた。
この世界では、元の世界でいう電気にあたるものがない。その代わりの動力として魔力が存在するらしい。人間は誰しも身の内に魔力を持っていて、それを使うことで生活を豊かにするのだそうだ。
前の聖女であるミヤ様も、来てすぐは魔法が使えなかったが、今いずみがやらされているのと同じ訓練をして、あっという間に習得したのだそうだ。
「本気ですかな、イズミ殿。こうですよ。こう」
「こ、こう?」
言われた通りにやっているのに、手のひらに熱を集めるという最初の行程すら出来ない。
同じ日本人でも、魔力には個人差があるのだろうか。神官は何度も頭を抱えている。
(ごめん。私もさすがにこんなに呑み込みが悪いとは思わなかった。これでも学校の成績は中の中くらいで卒業したんだけど)
心の中で謝ってみるが、こっちだって遊んでいるわけじゃない。だけど全くコツが掴めないのだから仕方がないだろう。
ミヤ様は几帳面な性格だったようで、日記を残していた。
それが今は文献として国王や研究者に閲覧されているらしい。
(プライベートの侵害だ。私は日記を書くのはやめよう)
そう思ったが、彼女の日記はいずみがこの世界のことを知るにあたり、かなり役に立った。
なにせ、同じ立場からのスタートだからだ。
日記には彼女のプロフィールも書いてあった。ミヤ様は昭和五十二年生まれの女性で、十八のときに大地震に遭い、気づいたらここにきてしまったらしい。
昭和五十二年を西暦に直して十八足して、さらに和暦に直すと平成七年。つまり、阪神淡路大震災が起きた年だ。
彼女は自身の知識をもとに、ダムの建設を指導し、この国を川の氾濫による飢饉から救った。
さらに水路の整備をし、農地改革をして作物を安定的に供給できるようにしたことで、聖女とあがめられたらしい。