聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「当然だろう。女性がいつまでもひとりで生きられるものではない。君は……失礼だがいい歳だし」
「……二十六ですが」
「ここでは、すでに子が三人いてもおかしくない年だ。ここに来る前の世界では結婚していなかったのか?」
呆れたように言われて、いずみは黙ったまま膨れる。
(それ、日本だったらセクハラ発言ですからね。結婚どころか処女ですとも。悪かったな)
「……いいえ」
「ならばこちらの決める相手で異存は無いな? 君は今後神官に教えを請い、聖女の力を目覚めさせるべく、力を尽くしてほしい」
(いやいや、異存は大ありですけど。それに、私は決して婚活しているわけではないので斡旋などいりません)
そう思ったけれど、オスカーは話はまとまったとばかりに満足げに食事を再開した。
いずみは考える。
ここの常識はまだわからないことが多いけれど、衣食住保証してほしければ聖女の力とやらを発揮しろってことなのだろう。力が目覚めなければ結婚しろというのは、役に立たないものをいつまでも王城で面倒は見れないからってことなわけで。それ自体は理にかなっている。
「では、例えば結婚ではなく仕事をしてはいけませんか。下働きでも何でもいいんです」
「君が良くても私が困る。呼び出した聖女に下働きをさせるなんて、なんて身勝手な王と呼ばれてしまうではないか」
眉根を押さえて苦悩した表情を浮かべられたが、知るか、と思う。
(こっちの意思も関係なく呼び出したんだから、十分身勝手でしょうよ)
「とにかく、これで決定だな。君は神官との勉強に励むように」
その言葉で、いずみの今後についての相談は打ち切られた。
その日の食事は間違いなく豪華だったはずなのに、いずみは不安や不満にとらわれすぎて、味がよくわからなかった。