聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
だいぶんすっきりした装いになったいずみは、ジナに案内され、食堂に移動する。
先に準備を終えたアーレスが待っていて、給仕についているリドルが椅子を引いていずみが座るのを待っていた。
「今日は歓迎のお食事です。たくさん召し上がってくださいね!」
メイドによって次々運ばれてくる料理はとてもふたりでは食べきれない量だ。
いや、アーレスくらい体が大きければ入るのかもしれないが、いずみにはどう考えても三日分くらいの量がある。
「あの、……みんなで食べません? せっかく歓迎の食事だというなら」
「とんでもない、奥さま。私達はお下がりをいただきますので、お気になさらず」
つまり食べ残しをいただくということだ。
だったらここで一緒に食べてもらった方が一度で済むというのに。なんとも貴族というのは面倒くさい。
(……アーレス様とふたりきりだと微妙に会話が弾まないんだよなぁ)
いずみは、一般的な日本人だ。
家族は両親、弟の四人。食事時は特に行儀が悪いと言われることもなく、テレビがついていて、目まぐるしく変わる画面から、次々と話題は湧いて出ていた。
だけど、本気で食事だけをするとなると、料理を褒める以外にネタがない。
「おいしいですね」
「そうだな。料理人のジョナスは腕がいい」
「そうなんですか」
「そうだ」
会話はあっさりと終わってしまう。
(ああもっと、語彙を増やしたい。会話力付けたい。コミュ障だから……で許されたのは、情報があふれる日本でだからだよ!)
放っておいてもネタが降ってくるあのころと違い、今はなにもかも自分で見つけなきゃならないのだ。