聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
(貴族であり騎士である男性に喜ばれる話題ってってなんだ。貴族って何して暮らしてるんだっけ。騎士は……きっと偉い人の警護とかそんなんだよね)

考えているうちに沈黙の時間が長くなりすぎた。

(どうしよう、お腹もいっぱいになってきた。アーレス様も黙々と食べ続けてるし!)

思考は目まぐるしく動き、座って食事をしているだけなのに、いずみは酸欠してしまいそうな心地だ。
やがて、視線を感じたアーレスが、いずみを見つめる。彼は一瞬目を泳がせた後、おもむろに口を開いた。

「イズミ」

「はい」

「明日から、俺は騎士団に顔を出してくる。イズミは……どうする」

突然振られる明日の話に、いずみも一瞬思考が止まる。

(さっきまでの沈黙は気にしてないのかな。案外マイペースな人なんだな)

「えっと、家の中を見回ってみます。必要なものを探したり」

「そうか。ではそうしてくれ。欲しいものがあればリドルに言いつけるといい。君が欲しいものを揃えるくらいのゆとりはあるからな」

なんとなくだが会話が続き、彼の返答にほっとする。
大柄でいかついけれど、話は聞いてくれる人なんだよなぁと再確認だ。

「ありがとうございます。あの、ところでこのお料理とてもおいしいんですが、私、そろそろお腹が……」

「ああ。そうだな、俺もそろそろ満腹だ。お開きとしようか。では、今日はゆっくり休むように」

アーレスはそう言いおくと、先に部屋を出て行ってしまった。
いずみが困り果てていると、助けに来てくれたのはジナだ。
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