聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

(ジョナスよ。お前が相手をしているのは俺の妻だと忘れてはいないか?)

「やったぁ。そうと決まれば、やっぱり和食の調味料が欲しいな。味噌や醤油を作ろうと思ったら半年はかかるけど」

いずみは手を合わせて喜び、アーレスには分からない言葉をつぶやきだした。

(ミソ、ショウユ……? なんだろう。どこかで聞いたことがある気がするのだが)

それに答えたのは意外にもジョナスだった。

「それならあるぞ?」

「え? 本当ですか?」

「いや、ここにはないが」

ぱっと顔を晴れ渡らせたいずみだったが、ジョナスの返しにガクッと肩を落とした。

「ミヤ様が考案された調味料ということで、一時料理人の間で話題になったんだが。うまく使いこなせる料理人がおらず、流行らなかったんだ。それでも、気に入ったお貴族様もいるにはいる。そういった方が、毎年自分の屋敷の料理人に作らせているはずだ」

「そうなんですね。誰なら持っているだろう」

いずみは口もとに手を当てて考え込んだ。その様子は真剣そのものだ。

(基本おとなしいが、主義主張はしっかり言う娘だ。そのミソやらショウユやらは本当に欲しいのだろう。だとすれば俺も夫として、なにか協力してやれれば……)

思い当たることが無いわけじゃない。そういう新しいものが好きな貴族といえば……。
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