The Last -凶悪-
――――――
「おいブス美。」
「・・?」
「アタシのカバンに知らない財布が入ってたんだけど、これお前のか?」
「・・・・・あ・・私の財布・・。」
「・・んだよ・・誰だよ気持ち悪いな。
一応、盗られてないか中確認しろよ。」
体育の授業が終わって更衣室を出たところで、リンカに声を掛けられた。
受け取った自分の財布の中を開けて、
言われたとおり中身を確認する。
「・・うん大丈夫・・。」
「あやうく泥棒扱いされるところだったし。」
「リンカ・・・。」
「あん?」
「どうして・・?
正直に返してくれたの・・?」
「人聞き悪い言い方だなブス美?」
「だって・・今までだったら・・
絶対返してくれなかった・・。」
「ブスをイジメるよりもっと楽しい事見つけたから。」
「・・・・・・。」
「おーいリンカ!」
「あ♡ユウヤ~!」
「早く来いよ!待ちくたびれた!」
「分かった!HRボサってすぐ行く!」
校門の外で自転車に跨がっている他校の男子生徒。
あれは・・近所の共学校に通う・・
確かリンカの彼氏の寺岡君・・だったかな。
リンカが一瞬にして女の子の顔になって、
小走りで教室へ戻っていった。
もう・・イジメは完全に無くなったのかな・・?
これで・・ようやく私も・・セイレンでの日々を心の底から楽しめるのかな・・?
そう思って教室に戻った中学2年の冬。
・・・あの事件が起きたのは・・
冬休みに入る少し前の12月だった。