夏に溶けて、死んじゃえばよかった。



そばの真っ白いテーブルに、ことんと。2輪の竜胆が置かれる。

音はしなかった。ブーケだったから。

だけど、たぶん、彼の心の綺麗さのことだから。



溜め込みたがりの、強がりの、儚い心のことだから。



綺麗で儚くて消えちゃいそうな音を空気に響かせて、余韻に浸らせて、私を泣かせるんだろうな。



あいている私の左手と、竜胆を手放してあいた彼の右手。

ぎこちなくうごいては、ゆらゆらとさまよって、ふらりふらり。


< 7 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop