守る理由。
「…ねぇ?」
『あ、す、すみません…』
黙り込んでしまっていたことに気が付き、謝ってしまう。
すると彼女は…ふふっ、と上品に笑った。
「私は平気、それよりあなたが心配。何かあったの?」
そう問いかけられ、なんて答えればいいか分からずまた黙り込んでしまう。
…エレベーターで会った見知らぬ平凡そうな女子高生が、瞬間移動して吃驚して逃げてきた…なんて言い出したら、誰でも“何言ってんだこいつ”って思うことだろう。
それは嫌だから…答えることが出来ないんだ。
『…え、っと…』
「…言えないなら仕方ないよね、取り敢えず…立つ?」
そう言って控えめに差し出される手。
申し訳ない、と思いながらもお言葉に甘えて手を借りることにする。
『…ありがとうございます…。』