エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
 スタッフの指示にしたがい、拓海はテントの設営や火起こし、日菜子は野菜をカットしたり、飲み物の用意をしたりとお互い忙しく動いた。

 気になって拓海を見ると、兄と何やら談笑していた。打ち解けた様子を見てほっとしていた日菜子の視線に気がついたのか、拓海がこちらを見て手を振る。

 日菜子も笑顔を浮かべて手を振り替えしていたら、背後から「顔が緩みすぎ」という冷たい声が聞こえた。

 振り向くとそこには美穂がいて驚く。

「え? どうして……ここに?」

「どうしてって……お兄さんに頼まれたからよ」

 日菜子の顔も見ずに、水で洗った野菜をサクサクと切っている。

「どうしてお兄ちゃんが? わたし何にも聞いてないよ」

「それは……お兄さんに聞いてよ」

 なんだかいつもと違い歯切れが悪い。気のせいか耳が赤いようだ。

 そこまできてはっと気がつく。

「もしかして、美穂……お兄ちゃんと?」

 ガタンと音を立てて、美穂が野菜の入ったボウルをひっくり返しそうになってふたりして慌てた。

「まあ……その、そういうことよ」

「い、いつの間にっ?」

 驚いて目を見開いた日菜子に、美穂は兄とのなれそめを聞かせた。

 ある日ふらっとわかばにやってきた兄が、それから週に一度は通うようになっていたらしい。

 拓海のこともそれとなく兄に伝えてくれていたようで、そのおかげもあって兄はすぐに拓海を受け入れたらしい。

「しかし、あの男も抜け目がないわね。わざわざ事前に連絡しておくなんて」

 美穂は拓海の行動力に感心しているようだったが、日菜子にとっては兄と親友がつき合っている事実のほうが驚きだった。

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