エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「南沢くんは小さいころ海外に住んでいたって本当?」
日菜子の言葉に拓海が少し驚いたように目を軽く見開いた。
「松風もちょっとは俺に興味があったんだな」
なんだかとてもうれしそうに見えるのは気のせいだろうか。
「べ、別にそういうんじゃないし。たまたま知っていただけよ」
「ふーん、あ、そう。まあいいけど」
途端に不満を露わにする。仕事中は作った表情をする拓海が、アルコールのせいか今は彼の感情の動きがよくわかる。
(なんで……そんな不満そうなの? わたしに興味を持って欲しいわけ?)
しかしそんなうぬぼれたことを相手に聞くわけにもいかずに飲み込んだ。
「俺だって普通だよ。サラリーマンの家庭。ただ親が海外をあちこち転勤する仕事だったからそれについて回っていたってだけ。日本語はアニメで覚えて、サッカーが好きだった。普通の少年」
『海外をあちこち』と聞くと、日菜子にとってはそれだけでもすごいと思う。
「両親ともに貧乏性でさ。せっかくだからって転勤になるたびに各国の観光地につれまわされてさ。そこで寺院や建築物を見て興味を持ったのが、きっとこの仕事を選んだきっかけのひとつなんだと思う」
「そっか……そうなんだ」
なんだかその言葉に妙に納得してしまう。
彼の描く作品にはそういう思いを感じるのだ。ただの仕事としてではなく、思いのようなものを感じることができる。
それは仕事の話をしている拓海が真剣に……それでも好奇心いっぱいの目で仕事をしている姿を見ていたからだ。
(そういうところは、かっこいいと思う)
意地悪ばかりされても、それでも拓海との距離を取らない理由はそこにあるのだと日菜子はうすうす気がついていた。
「なんだよ、それだけかよ?」
「え? すごいね。小さい頃から好きだったものを仕事にできて」
褒めたにもかかわらず拓海はまだ不満げだ。
なにがいけなかったのかと考えながら、日菜子はワインに口をつけた。
「いや、もっとあるだろ? 〝好き!〟とか〝かっこいいー!〟とか」
「う……っごほっ、ごほっ。な、なに言ってるの?」