エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「きっと……南沢くんのファンの女の子、怒ってるよ」

 社内でも一・二を争うモテ男に恋のお相手が現れたのだ。しかも相手は社内でもさえない相手だとなると不快感を持つ人もいるに違いない。

「なんだよ、それ。俺が誰とつき合おうが、他人には関係ないし」

 拓海は呆れた様子で鼻で笑っている。確かに彼にとっては迷惑な話しかもしれないが、結局のところそれが現実だ。

「だから、松風がどうしたいかが問題だろ。俺はこうしたいと思ったから、口にしただけだ」

「どうって……」

(勝手に発言したのは向こうなのに、なんで解決するのがわたしなの!?)

 そう思った後に、拓海が最後に言った言葉がひっかかり尋ねようと思った。

 そのとき上の階から数人の声が聞こえた。おそらく食事を終えた社員だろう。階段の踊り場でこんなふうに話をしていたら噂に余計なオプションをつけかねない。

「さあ、どうするんだ?」

 一歩詰め寄ってきた拓海の脇をすり抜け、階下に逃げた。

「おい、松風。待てよ」

 止められるのも聞かずに、ダッシュで駆け下りる。

「今度メシ行くから時間あけとけよ」

 拓海の声が聞こえてきたけれど返事などできるわけもなく、日菜子は一目散に逃げた。


 デスクのあるフロアに着き給湯室に逃げ込んだころには、ドクドクと脈打つ心臓の音がうるさいくらいだった。

 ただそれは、走ったからそうなったのか、拓海の言葉に過剰反応してそうなったのか、日菜子にはわからなかった。

「しょ、食事? なに着ていけばいいの?」

 彼女のなかに〝行かない〟という選択肢はなかった。彼の言葉の真意もう少しきちんと聞きたかったのだ。

 こんなことになってしまって自覚した恋心が大きく疼く。

 フロアに戻るとあれこれ聞きたそうな花に『何も話しません』オーラを醸しだして、仕事に没頭した。

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