エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
(なんだか、ものすごく悪い顔してない?)

 気のせいであって欲しい。日菜子はそう思ったが、拓海は日菜子の不安そうな顔を見るとますます悪い笑みを深めた。

「ただし、交換条件がある。これからは俺の言うことをなんでも聞くこと」

「な、なんで!?」

 ただ目撃したことを黙っていて欲しいと頼んだだけなのに、なんでこんなことを言われないといけないのだろうか。

 どう考えても日菜子に不利な条件だ。

「別に俺が口を滑らせてもかまわないなら、好きにすればいいけど」

「ひどい……」

「俺の提案受け入れるだろ?」

 拓海はそう言いながら、日菜子の眼鏡を奪う。

「こんなダテ眼鏡なんか外せばいい。男を投げ飛ばしたときの目、最高だったのに」

 素顔を見られたくなくて必死に隠す。

 しかし顎を持ち上げられて、無理矢理視線を合わせた。

 意味ありげな拓海の形の良い目見つめられて、日菜子は自分の体温が上がるのを感じた。

 そこからあれこれと拓海が話をしていたけれど、ほとんど耳に入ってなかった。

 冷静に考えれば、彼の申し出を受け入れるなんておかしなことだ。

 けれど知られたくない秘密を知られてしまったことに加え、薄暗い資料室で男性とふたりきり、しかも間近に迫られている。

 日菜子がパニックを起こすのには、十分すぎるほどだった。

 一分一秒でもこの状況から逃げ出したい。

 そんな逃げの気持ちから、彼の提案を受け入れると、うなずいてしまった。

 日菜子が我に返ったのは、給湯室のシンクを磨いているとき。

 しかしこのときになって後悔したところで、後の祭りだ。

「ああ……もう、本当についてない」

 厄日とはまさにこのことだ。落ちこんだ気持ちで、日菜子はシンクを磨き続けた。
 
 
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