あやかし神社へようお参りです。②
「巫女さまはまだお若いのですな。説教じみたことを申してしまいますが、容易に妖へその御名を教えてはなりません」
「名前を教えちゃいけない……?」
「左様でございます。名はそのものを縛る、この世で一番身近な呪でございます。悪しきものに知られてしまえば、取り返しのつかないことになります」
そうなんだ、と驚いていると、隣に立っていた円禾丸がけらけらと笑う。
「もっとも、爺さんに何かができるとは思わんがな」
「ちょ、ちょっと円禾丸!」
袖を引っ張り、小声で「失礼なこと言わないの!」と嗜める。お爺さんはそれが聞こえてのかそれとも察したのか、「お気になさらず」と片手をあげる。もう、と円禾丸を睨んだ。
怒るな怒るな、と私の背中を押した円禾丸は、部屋の奥に置いてあった木製の椅子に私を座らせる。かげぬいはその前に座り、円禾丸はよくわかない形をした石像に腰掛けた。
「以津真天っていうのは、どういう妖なの?」
「怪鳥でございます。狐の妖が妖狐と言ったように、鳥の妖がひとつが以津真天になります」
怪鳥の以津真天。聞いたことがないな、と首を傾げる。まだまだ私の知らない妖はたくさんいるようだ。
「ああそうだ。ちょうどいい、三門に爺さんのことを診てほしいと伝えてくれんか」
「お爺さん、怪我してるの?」
慌てて身を乗り出すと、かげぬいは膝に置いていたその手をすっと後ろで組んでやわく首を振る。