あやかし神社へようお参りです。②
「あっつー……まだ五月なのにこんなに暑いなんて、信じらんない」
「ねー……」
木陰に避難した私たちは、脱力するように根元に腰掛けた。
一番日の高い五限目は運動場で体育だった。体力測定の五十メートル走が早々に片付いたおかげで、残りの時間は自由になった。クラスメイトの男の子たちは嬉々としてサッカーを始めていた。
「おもてら町って、盆地なんだっけ?」
「そうそう、夏は蒸し暑くて冬は死ぬほど寒い」
げんなりした顔でそう言った詩子に小さく笑う。確かに冬の間は想像以上に寒かったな、なんて思い出していた。
「あ、雪子。いいなー、涼しそう」
体育は不参加の雪ちゃんが窓から外を眺めていたらしい。私たちに気づいたようで、小さく手を振り返してくれた。
「雪子はいつも涼しげだよねえ。汗かかないのかな。……あ、富岡くんが全部貰ってるのかも」
詩子が堪えるように笑う。不思議に思って詩子の視線を辿ると、サッカーに熱中している男の子たちの中心にいる富岡くんにたどり着く。
「お前、汗かきすぎだろ!」
「シャツ絞れんだろ、それ」
他の男の子たちに肩を叩かれながらからかわれる姿があった。「正反対のふたりだね」と笑いながら返す。
「雪女と……あー、駄目だ。暑くて思いつかないや」
最近やたらと妖の名前に詳しくなった詩子がそう言った。丁度チャイムが鳴り響き、「じゃあ解散!」という先生の声でみんながぞろぞろと動き始める。
「麻? 戻ろうよ」
「え、あ、うん!」
はっと我に返って、先を歩いていた詩子に追いつく。ある考えが一瞬脳裏を過ぎったが、「まさかね」と首を竦めた。窓辺に立っていた雪ちゃんの姿はもうなかった。