あやかし神社へようお参りです。②
「ど……どちらさまですか?」
反射的にそう問えば、その人はわずかに口角をあげる。
「────そうか、私が見えるようになったか」
木管楽器の音色を聞いているような声だった。
「ここしばらく、愛い子たちの声が私のもとへ届かなかった。久しくこのようなことはなかったゆえ様子を見に来てみれば────土地についた深い傷が再び広がってきているではないか」
有無を言わせない威圧感と迫力に、立っているのがやっとだった。額に脂汗が滲む。空気がのしかかるように重い。口をはさむ間もない。
「麻よ」
どうして私の名前を、そんなことを聞く必要はなかった。その圧倒的な存在感に、なんとなくその人が何者であるのかを感じ取る。
「本当に私の力を借りたいときは、私の名を呼ぶといい」
「……っ、でも、知らない」
なんとかそう答えると、そのひとはまたほんのわずかに口角をあげた。
「もう、分かっておろう」
耳の奥でその声がよく響いた。瞬きをした次の瞬間には、その場所には誰もいなかった。同時に糸が切れたかのように、その場に膝を付いた。
全身の肌が粟立っている。走ってもいないのに、息切れしたように喉が苦しかった。