あやかし神社へようお参りです。②


そして部屋の前に立ち襖に手をかけたその時、


「開けるなっ!」


 怒鳴り声に思わず手を引っ込めた。胸の前で握りしめる。


 「三門さんから聞いてないのかよ。誰にも会いたくないんだ。開けるな」


 帰ってきて直ぐに会った時とは正反対の、警戒するような声だった。戸惑うように名前を呼べぶも、返事はない。


「なんで、私、大丈夫だよ。私、結守の人間だから、富岡くんの事情も分かってるし、さっきだって」

 「分かってる? それは富岡蛍助のことだろ。さっき会ったのは富岡蛍助だ、俺は違う。もう富岡蛍助はいない。おれは雪童子なんだ。富岡蛍助はさっきで最後、もう誰にも会わない」

 「どうしてそんな悲しい事言うの」

 「同情されたくないから。大人になれない、消えてしまう、可哀想、中堂もそう思ってんだろ」


 言葉に詰まった。富岡くんの言葉の通りだったからだ。


 「もう俺のことなんか忘れて、さっさとどっかいけよ」


 じゃあなんで、


 「誰にも会わない。会いたくない」


 どうして、


 「おれのこと、忘れてよ」


 どうして、そんなに泣きそうな声でそう言うの。


< 260 / 334 >

この作品をシェア

pagetop