あやかし神社へようお参りです。②




 頭痛が収まりゆっくりと顔をあげる。私の服を掴んだお雛さまはきちんと元の位置に戻っていて、綺麗に前を向いて並べられていた。

 時計を見上げる。針は三時を指していて、もう三時間もそこに蹲っていたことになる。慌てて立ち上がり障子に手をかけたその時、反対側から誰かがすっと障子を開けた。

 現れたのは詩子のお母さんだった。一歳くらいの小さな女の子を抱いている。

 詩子って妹いたんだ、と驚きながら横にずれて急いで頭を下げた。


 「勝手に入ってしまって、ごめんなさい。実は」

 「うたちゃん、ほら見て。お雛さまよ~」


 詩子のお母さんは、まるで私が見えていないかのように前を通り過ぎる。小さな女の子にひな人形を見せなら、嬉しそうに語りかけていた。

 え、と目を瞬かせた。


 「あ、あの……」

 「ほら、あれがお雛さま、となりはお内裏さま。すてきねえ」


 私の声が聞こえていないかのようだ。背筋を変な汗がつたって、心臓がどくどくと波打った。詩子のお母さんは優しい声でひな祭りの歌を歌い始める。

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