あやかし神社へようお参りです。②
「あの」とその肩を叩こうと手を伸ばして、ひっと息を飲んだ。私の手が、叩こうとした肩をすり抜けたのだ。
胸の前にその手を引き寄せて確かめる。ちゃんと手の感触も感覚もある、でも、その手がうっすらと後ろの景色を透かしていた。出し方を忘れてしまったかのように声が出ず、ただただ目を見開いて腕を持ち上げたりして確認した。
間違いなく自分の腕は、いいや体全部が透けている。
「詩子、このひな人形はあなたを守ってくれるからね」
呼ばれたその名前にはっと顔をあげる。いつの間にか歌が終わって、詩子のお母さんはそう微笑んだ。
────詩子? この子の名前も詩子なの? どうして、だってその名前は。
その瞬間、目の前の景色がぐにゃりと歪む。渦を巻く景色に立っていられず、目を瞑ってその場にしゃがみ込んだ。
するとしばらくして、遠くでまたひな祭りの歌が聞こえる。あどけない無邪気な声だった。どんどん近付いてきて、まるですぐそばで歌っているように聞こえる。恐る恐る目を開けると、幼稚園児くらいの女の子の背中があった。