あやかし神社へようお参りです。②


 「はるのやよいのこのよきひ、なによりうれしいひなまつり」


 とても楽しそうな声だった。少女が動くたびに、高い位置で結われたポニーテールがさらさらと揺れる。

 少女は忙しそうに手を動かしている。ひな人形がその手に握られているのがちらりと見えた。


 「“おだいりさま、やよいってなんだかわかりますか”。“やよいはひなまつりってことだ”。“まあそうなんですの”」


 お内裏さまとお雛さまを仲良く寄り添わせながら、少女が声色を変えてそう言った。


 「詩子どのが楽しそうに遊んでおられるぞ」

 「今年も、お元気な姿が見られて何よりじゃ」

 「愛らしいお姿ですこと」

 「誠に愛らしいのう」


 鈴のなるような美しい声だった。背後で誰かが話しているのが聞こえる。はっと振り返ると、ひな壇にひな人形が並んでいるだけだった。

 気のせいか、と思い向き直る。しかしすぐに目を見開いてもう一度振り返った。


 ひな壇に、人形は並んでいるはずがない。だって、ひな人形は今、女の子が遊ぶために床に下ろされているのだから。


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