しあわせ食堂の異世界ご飯4
「一応、形くらいはライナス様にお見せした方がいいかと思いまして……とても美味しいです。私たちのサンドイッチよりも、こっちの方が好きです」
 きっぱり負けを認めるルシオに、ライナスは脱力する。
「私たちがサンドイッチの屋台を作ったのは民衆の人気を得るためで、決して民衆の食堂の売り上げを奪いたいわけではない。……屋台を置く場所を、少し見直した方がいいかもしれないな」
「私もそう思います。こんな美味な料理を出す店は、決して敵に回してはいけません。料理を食べられなくなってしまいますから」
 リベルトを玉座から引きずり下ろし、皇帝になろうとしている男の側近がそんな理由で敵対するか否かをきめるのかと……ライナスは思う。思うのだが、リズがお世話になっていることもあり、ライナスも敵になりたくはない。
「人気を取りに行きすぎるというのも、問題になってしまいますね。でも、今回はこのコロッケを食べられたことでよしとしましょうか……」
「待て、私はコロッケを食べてないから全然よくないと思うのだが……」
「…………」
 思わず、ふたりの間に沈黙が流れる。
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