しあわせ食堂の異世界ご飯4
 ただ欠点といえば、料理が壊滅的に下手ということだろうか。
 以前は彼女の夫が料理を担当していたのだが、亡くなってしまい……アリアと出会うまで必死にしあわせ食堂を守ってきた強い女性だ。

「よいしょっと。ん、こっちも完成」
「あー、俺も早く卵焼きを出せるようになりてぇ」
「カミルだって、あと少しだよ。焼き加減のタイミングが上手くなれば、完璧」
 卵焼きを切って盛り付けるアリアを、カミルが羨ましそうに見つめている。
 カミルはまだ卵焼きを練習中なので、アリアが作っているときは少しでもヒントがないか気を抜かない。
「夜ご飯のおかずは、卵焼き多めにしよっか」
「はは、朝も食べたのにいいのか?」
 飽きるだろうと言うカミルに、アリアはそんなことないよと首を振る。
「美味しいし、好きだから私は大歓迎。それに、料理の上達は作ってなんぼだよ! これ、ジャンさんのところに出してくるね」
 アリアだって、前世でいったい何個卵焼きを作ったか思い出せない。もし許されるのであれば、星の数ほど……と、答えたいくらいだ。
「あ、ちょっと待てアリア! ストロガノフも頼む」
「はーい」
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