アラサーですが異世界で婚活はじめます
 リオネルとバイエ家の馬車の姿は……入り口付近には見当たらなかった。

 ……森の中でわたしをずっと探してくれているのだとしたら……。

 自分勝手な行動で、彼に大変な迷惑をかけてしまった……。

 リオネルに対して申し訳ない気持ちでいっぱいの美鈴は、どこかに彼の姿が見えないものかと必死の思いで周囲を見回した。

 雨で人が散ってしまった公園の並木道の手前に、一台だけ、白馬二頭立ての華麗な馬車が停まっていた。

 馬車の上には、スカイブルーの日傘を差し、つば広の白い帽子に濃紺のストライプのリボンの凝ったデザインの帽子をかぶり、裾と肩に豪華なレースを幾重(いくえ)にも重ねた白いドレスに身を包んだ令嬢の姿が見える。

 近づいてくるフェリクスの馬車の音に気づいて、傘の影からその令嬢がチラと顔をのぞかせた。

「……フェリクス! お久しぶりね。……随分と長い間、貴方の顔を見なかった気がするわ」

「随分と」という部分をいくらか強調しながら、令嬢はフェリクスに声をかけると、優美可憐としか言いようのない動作で傘をたたんで、フェリクスに微笑みかけた。

 緩いウェーブのかかったストロベリーブロンド長い髪、ミルク色の肌に、少し目尻が上がった気の強そうな鮮やかな青色の瞳……女性の美鈴も見惚れるほど、美しい女性がそこにいた。
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