執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~



「あ、うん。どうぞ」

 マイペースな瞬くんにいからせていた肩から力が抜け、苦笑いしながらうなずく。

 朋美の家に来る前にINO’S COFFEEに寄って三人分の飲みものを買ってきたんだった。水出しアイスコーヒーにカプチーノ。そして期間限定の国産ブラッドオレンジジュース。

 コーヒーが苦手な瞬くんは迷わずオレンジジュースを取ると思っていたのに、「俺はアイスコーヒーにしよっと」と鼻歌交じりに言い、コーヒーと氷が入った透明の容器を取り出した。

「あれ、瞬くんコーヒーの苦みが嫌いだって言ってなかったっけ?」

 自分用にカプチーノ、朋美にはアイスコーヒー。そして普段からコーヒーを飲まない瞬くんのためにジュースを買ってきたんだけど。

 私が首をかしげると、瞬くんは視線を手元からこちらに向けた。

「あ、もしかしてまどかさん俺のためにオレンジジュースを選んでくれました?」

うなずいた私に向かって、彼はビシッと親指を立て八重歯を見せて決め顔をする。

「ありがとうございます。でも、俺だってもう二十五歳の大人の男ですから、コーヒーくらい余裕ですよ」

 アイスコーヒーを飲めるくらいでそんなどや顔をされても、とあきれる私をよそに、瞬くんは「コーヒーはカフェインが入ってるから、朋美ちゃんはこっちね」とブラッドオレンジジュースを朋美に手渡す。

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