執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~

 ぼんやりと開いた記事を見下ろしていると、「わざわざ元カレが紹介されている雑誌を買うなんて、まどかさん未練ありまくりですね」と瞬くんにつっこまれた。

「こ、これは自分の会社が記事になっていたから仕事のために買っただけで、別に未練があるわけじゃないからね」

 慌てて言い訳をしながら雑誌を閉じる。

「またぁ。写真を見る目がハートになってましたよ」
「ハートになんて、なってません」

 とことんからかう瞬くんと、しかめっつらで反論する私。そんな険悪ムードな私たちの間で、朋美はオレンジジュースを幸せそうに飲んでいた。

「このオレンジジュース、果肉が入ってておいしい」

 ストローから口を離しつぶやいた朋美の言葉を聞いて、「そうでしょう?」とすかさず反応する。

「ブラッドオレンジといえばイタリアが有名なんだけど、これは契約農家さんで作った国産ブラッドオレンジをお店で絞り機を使ってひとつひとつ作る期間限定の生ジュースでね、手間はかかるんだけどすごくおいしいの」

 たかが一杯のジュースだけど、この商品を出すために商品開発部と協力し宣伝から商品提供の手順のマニュアル作成にまで携わったから、美味しいと言ってもらえるのはすごく嬉しい。


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